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北見・訓子府・武蔵美・屋外彫刻 30年をつなぐもの
北見・訓子府・武蔵美・屋外彫刻 30年をつなぐもの
松本隆(彫刻家、古典彫刻技法研究家、武蔵野美術大学非常勤講師)
私が武蔵野美術大学の彫刻学科を卒業してすぐ、1992年5月頃のことです。北海道で彫刻家として活動されている小川研さん(武蔵美OB、「北の工房」主催)によって、屋外彫刻シンポジウム(プレ・シンポジウムin北見―グループM.A.U.)が企画されました。夏休みの1か月で現地滞在制作を行い、小川氏の作品と共に北見市の朝日町東部緑道に設置する計画です。
当時、彫刻学科で講師をされていた、麻生マユ先生が小川氏の同級生だったことから、麻生先生ほか研究室の推薦で武蔵美の院生、卒業生の4人(野末博啓、土田義昌、春日野幸男、松本隆)が選ばれることになったのです。当時私は卒業後、武蔵美の彫刻学科研究室に勤めて数カ月を過ぎたばかりの頃。また新作を恩師、加藤昭男先生のアトリエを間借りして制作するというプレッシャーもあって、作品の方向性に迷っていた矢先でもありました。
その年の7月末にシンポジウムが開始されました。私は「コンクリート+煉瓦」の作品だったので、現場で制作し、他の3人は石彫などのため、石材屋の工房での制作となりました。昼は制作、夜は端野町(現北見市)の小川氏の自宅に宿泊という日々が始まったのです。現場制作では、色々な不便に襲われます。まず天候ですが、雨の日は作業ができません。そして、コンクリートを練るため、200m先にある湧き水を何度も汲みにいかなくてはなりません。晴れれば炎天下の過酷な労働が待ち受けていました。そのような制作の一方で、小川氏は休日に様々な場所に私たちを誘ってくれました。オホーツク海岸でのキャンプ、湖巡り、地面に掘っただけの温泉、そして美食の数々。また雄大な景色、夜空の星などは若い私の感性を開くのに十分な糧となったのです。かくして作品は無事完成しました。
東京に戻った私は、作りかけのテラコッタ作品に再び手を入れ完成させました。横で静観されていた加藤先生は「北海道の制作がいい時間になったようだな」と意味深げに話されました。これが私の個展デビュー第一作となり、作家人生をスタートさせることになります。
時は、2015年。武蔵美でかつて講師をされていた、故・水本修二先生の渋谷区の「こどもの城」にある屋外彫刻作品「関係空間」が、閉館とともに取り壊されるという情報が、武蔵美の黒川弘毅先生のもとに入ります。かねてから、屋外彫刻の保全活動に取り組んできた黒川氏は、これを危機的な問題として取り上げました。水本氏の故郷であるオホーツク地域に何とか移設できないものかと、相談を受けていた私が、かつてお世話になった小川研さんを紹介します(あの方なら、何かいい提案をしていただけるかもしれない!)。紙幅上、細かい経緯は割愛しますが、その後小川氏の熱心な働きかけによって、訓子府町がこのモニュメント移設に乗り出すことになりました(小川氏の調査で、水本氏が訓子府町出身と判明しました)。そして武蔵美の講師で、水本氏と親しかった細井篤先生が中心となり、訓子府町レクリエーション公園芝生広場への設置が実現しました。さらに、このことをきっかけに武蔵美と訓子府町との関係が進みます。訓子府町ではパブリックアートによるまちづくり事業「くんねっぷアート・タウン・プロジェクト」という文化芸術活動が2017年にスタートしました。その一環として武蔵美卒業生による「彫刻作品公開制作」が行われ、年に1人(または1チーム)が滞在し、公開制作とワークショップをおこないました。これまでに、山本麻璃絵(2017年)、松尾ほなみ(2018年)、李旭+細井えみか(2019年)が参加しました。今年2021年は杉浦藍さんが参加予定です。
私が北見で制作したのが1992年。オホーツク地域と武蔵美とのつながりが、二十数年の時を経てなお続いている背景は、小川研さんの存在が大きいと思われます。そして、彫刻というものを愛する北海道の多くの人々の存在があってこそ実現したものといえるでしょう。
(画像提供:訓子府町教育委員会、小川研、松尾ほなみ、篠田康行)
中島公園の『森の歌』台座修復
8月30日(月)早朝から建設局みどり推進部公園管理課からの連絡を頂き、4名参加しました。「森の歌」は1959年に中島公園で開催された北海道博覧会を記念して建立されたもので、設置当時は白コンクリート製でしたが、1997年札幌コンサートホールキタラの建設に伴い、現在の場所(公園入口)にブロンズで再鋳造されました。石材・コンクリートの取り外しなどを直接見ることは少なく大変貴重な体験でした。添付写真の様に1枚づつ丁寧に石材を取り外すと、ボロボロになったモルタルが出現します。1度に外さず数日かけて補修作業を進めていきます。
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