「芸術作品をいつまでも美しく、作家の意図を永遠に伝えるために」
札幌市におけるコンクリート彫刻の経年劣化の現状
日本では広場や公園などに様々なコンクリート製の白い彫刻が置かれている。終戦後間もない1950年代、日本経済の発展に伴って全国的に大型土木事事業が興り、セメントの需要が飛躍的に高まった。こうした時代を背景に、大手セメント会社が当時の新進気鋭の彫刻家にセメントなどを提供してコンクリート彫刻展を開催するなど、コンクリート彫刻の制作に大規模な支援を行い多くのコンクリート彫刻が設置された。
「札幌彫刻美術館友の会」では、今年度事業の1つとして、市内にあるコンクリート彫刻の実態調査を行った。その結果、多くの作品が緊急、又は早期に補習が必要と分類された。市内で最も早く設置されたコンクリート彫刻「つよいこ よいこ」(山内壮夫 作)は設置後に何度も白色塗料で表面処理されていたようだが、塗料が表面のあちこちで、モルタルと共に剥落しているほか、多数のクラックやポップアップばかりでなく、鉄さびや骨材の露出、作品の一部が破損・欠落も観察された。
又、学校校内に設置されているコンクリート彫刻は設置後30年ほどではあるが、やはり補習を必要としている。これまで友の会が中島公園の山之内壮夫作のコンクリート彫刻を対象に、透明で紫外線に強く、コンクリート浸透性を持つポリマー塗料による補習を試行している。この処理が原型の色調を損ねることなく、5年以上にわたって汚れや雨水を防ぎ、保存効果を上げることを確認している。
公園や学校に設置されているパブリックアートとして、設置された経緯や作家の意図を伝え続けていくためにも、絶えない彫刻補修の努力を続けていかなければならない。