6月14日、「木下成太郎像」の修復のため来道された黒川弘武蔵美教授を迎えて、札幌彫刻美術館において彫刻セミナーを開催しました。午前中は美術館の学芸員、彫刻家などを対象にブロンズの損傷と保存、修復について専門的な講演が行われました。屋外のブロンズ彫刻を例に損傷の起こる仕組みを科学的に示ながらの説明とそれぞれの損傷に対する具体的な修復保存方法と、学ぶことの多い講演でした。また、東京、長野県、仙台などでのボランティアによる彫刻清掃の紹介がありました。黒川先生の「彫刻清掃は触覚の芸術である彫刻を楽しむ絶好のチャンスであり、触ることにより、より深い鑑賞ができ、さらに達成感を得ることができる。」という言葉は友の会の活動に大きな励みとなる言葉でした。
午後からは彫刻美術館の前庭の彫刻をモデルに彫刻清掃ワークショップ。黒川先生推奨のブラシを使用し、水洗い-洗剤洗い-水洗い-乾燥-蜜蝋ワックスの塗布-乾燥-火炎放射器により加熱-艶出し磨き。 この方法は経験が必要なので、すぐには私たちは使えませんが、彫刻は見違えるように美しくなりました。
10月に再度黒川先生が来札される予定があるので、その折に彫刻美術館のわだつみの像を黒川先生の指導の下、清掃、ワックス塗布を行います。(奥井)
5/21 彫刻美術館前庭の彫刻清掃
5/21(日) 本郷新記念札幌彫刻美術館にて、
美術館・記念館の前庭に設置されている彫刻の清掃を行いました。
この回では同美術館学芸員の山田様、道近美学芸員の寺地様にもご参加いただき、
彫刻の解説や、保存方法のお話等をさせていただきました。
何度か通り雨に見舞われ、一度中断を余儀なくされましたが、
ほとんど気持ちのいい青天で、清掃日和となりました。
美術館前に設置されている『わだつみのこえ』は背の高い作品。およそ190センチほどでしょうか。手の届かない箇所もありますので、ホースによる水洗いを行いました。
記念館前のブロンズ像3体、またコンクリート像の『鳥の碑』も同じく、
水洗いと、雑巾がけを行いました。
宮の森は車通りも少なく、樹々が多いため、大通公園や札幌中心部に設置されている彫刻に比べて、汚れや劣化も少なく非常に綺麗な状態でした。またそのほかにも設置の状態や台座の安定性など、課題もいくつか見つかった、有意義な清掃だったと思います。
文化講演会「古代ギリシャのブロンズ彫刻」
2017年5月28日(日)道立近代美術館で120名を超えるお客様を迎え文化講演会が行われました。最初に司会の常田先生(北大名誉教授)から古代ギリシアの芸術について解りやすく説明があり、ついで松本先生(彫刻家)から、ステージ前に展示頂いた鋳造部品を直接示しながら具体的に当時の制作技術を解説頂きました。続いて羽田先生(東京芸大美術部講師)が「リアーチェの戦士像」を中心に当時のブロンズ制作の背景や製作技術などについてや最先端の研究成果などを~。
最後に後藤先生(彫刻家・日本鋳金家顧問)は、札幌競馬場入口に設置された三頭の馬の制作者。
道内の彫刻も詳しく、幅広くブロンズのの補修・保全の重要性と問題点などをお話しいただきました。
それぞれに、彫刻芸術に対して興味深い話題ばかりで感銘を受けました。
9月1日学習会報告 《木下成太郎像》の調査
8月31日に行われた武蔵野美術大学・黒川先生の彫刻セミナーに続き、9月1日は午前10時30分から中島公園の朝倉文夫作《木下成太郎像》の調査・清掃を行いました。
まず、水洗いをした後に基壇の穴からファイバースコープによる内部調査・・・ブロンズ像本体と基壇をつなぐ鉄製のボルトが腐食し、安全性に問題があることがわかりました。その後、1年ぶりにワックスを塗る作業を行いました。清掃道具の選択の仕方、蜜蠟の希釈方法から塗り方、磨き方まで「美術館の作品の清掃・保全を引き受けられるようにきちんと覚えた方が良い」と黒川先生と二人の助手さんに教えて頂きました。自分で彫刻作品を作り上げるようにワックスを磨き上げると、いかつい表情だった木下成太郎が温和な顔に見えてきます。
詳しい清掃手順とワックス作業については次回の学習会(9月26日Lプラザにて開催予定)での勉強課題とします。今後の友の会の清掃作業スキルアップに大いに役立つ、有意義な一日でした。
(髙橋)
2016/09/04 大通公園彫刻清掃(西7丁目、資料館前)
残暑厳しい中での清掃でした。
本日は、大通公園西7丁目にある『漁民の像』と、札幌市資料館前に設置されている『若い女の像』の清掃を行いました。
気温は高かったのですが、時折吹く風が心地よい一日でした。
大通公園は既にオータムフェストの準備が始まり、飲食店スペースが立ち並んでいます。その喧噪の物陰に隠れてしまった漁民之像は、土ぼこりや鳥のフン、木の小枝などでかなり汚れていました。
漁民之像は正面から見ると大きくどっしりとした見た目と印象をしていますが、よくみると漁網の目やヒダ、服のシワ、そして裏側や台座部分は貝や錨があり細かい装飾が全体的に施されています。漁夫の背中にはカモメも。
カゴのニシン、網の裏部分の構造がかなり複雑ですので、まずは全体をホースで強めに洗い流しをします。
ホースとバケツで水洗いした後は、像を雑巾、台座をデッキブラシで清掃しました。
今回も清掃に参加していただいた、全盲の越山さんも手で形状を確認しながら、丁寧に雑巾で磨いていました。
写真では確認しづらいかもしれませんが、お母さんの鼻、そして子どもの指にペンキらしき痕跡がありましたので、載せておきます。付着してからかなり時間は経っているようで、水では落とせませんでした。大通公園では毎年頻繁にイベントが行われているので、イベントの準備作業で飛散してしまったものでしょうか。
水洗い後はワックスがけ。
予めケロシンで溶かしてあった蜜蝋原液(1/3)を更にベンジンで約5倍に薄めて使用しました。
ワックスの調合は橋本会長がバーテンダーのような鮮やかな動きで。
ワックスで表面も輝き、とても綺麗になりました。
彫刻家の田畑さんが最も苦心した網の部分もすっかり綺麗になりました。
ニシンも活きを取り戻したかな?
札幌資料館前のバラ園に移動し、『若い女の像』も清掃しました。こちらは噴水とバラ園に囲まれた環境のおかげか、非常に綺麗な状態でした。噴水の中に設置されているため清掃するには足場の良くない場所でしたが、漁民之像と同じく水洗いとワックスがけを行いました。
彫刻清掃に参加したみなさんお疲れ様でした!
次回もよろしくお願いします。
2016/8/27 中島公園彫刻清掃(キッズガーデニング)
暑さも和らぎ過ごしやすくなってきました。
秋も間近になった中島公園で本日、キッズガーデン参加のみなさんと彫刻たんけんを実施しました。大人5名、子ども17名、そして私の友人4名にも手伝っていただき、今回も賑やかな彫刻清掃となりました。
先月、大雨のため中止になってしまった「かもくま祭」のツアー用に作られた手旗、
今回は大活躍でしたよ!
先日のパーマシールド塗装で表面が美しく輝いていた「母と子の像」。
太陽の光を浴びて光っていましたが、お子様方の積極的で丁寧なお掃除により更にピカピカツヤツヤになりました。
山内壮夫が子ども達に面白く遊んでもらうために開けた穴で遊ぶ、清掃後の子ども達。
「おかあさんの背中みたい」という声も。
そして、同じポーズをとってみたりして。彫刻の親子の気持ちになってみました。
もう一方のグループでは「ネコとハーモニカ」「鶴の舞」のお掃除をしてもらいました。
こちらも親しみやすく遊びやすい彫刻作品。子ども達も楽しみながらお掃除できたみたいです。
鶴の舞は子ども達にとって背の高い彫刻ですが、協力しあって、なんとか綺麗になったかな?
最後は「笛を吹く少女」をお掃除してもらう予定でしたが、ちょっとキッズガーデンのご都合で、彫刻探検はここでおしまい。友の会のみなさんで、清掃を行いました。無事4点、彫刻清掃完了です。
今回、子ども達は抽象的でちょっと面白い形に興味をもって、率先して洗ってくれたり、同じポーズして非常に楽しんでいたようでした。また親御さん方からも、彫刻を立ち止まってじっくり見る事が無かったので初めて興味を持った、といったご意見がありました。野外彫刻作品は触ってはいけないものではなく、もっと親しみを持って触れても大丈夫と気づくきっかけになれてよかったですね!また次回も年齢関係なく色々な人を交えて、彫刻に興味を持ってもらえるような彫刻清掃をやっていきましょう。
ところで、突然ですが今話題の「ポケモンGO」はみなさんもご存知でしょうか。GPSを使ったスマートフォンゲームで、実際に街を歩くことで「ポケモン」というキャラクターを見つけたり、捕まえて集めたりすることができます。その中で、特定の地点(ポイント)でポケモンが出現しやすかったり、ゲームで使えるアイテムがもらえるのですが、そのポイントに中島公園の彫刻が含まれています。そのおかげで、「森の歌」近くではゲームプレイヤーで大盛況でした。大通公園も賑わっており、ゲームのために彫刻の前で立ち止まる人がかなり増えました。これをきっかけに札幌の彫刻に興味を持ってくれる人も増えてほしいなと思います。
清掃中、背中の上にポケモンいましたが、これは偶然です。すみません・・・
次回は大通公園の清掃。漁民の像〜若い女の像です。ちょっと範囲が広いので大変かと思いますが、次回もよろしくお願いします。
「彫刻セミナー開催」
札幌彫刻美術館友の会【彫刻セミナー】第1回
ブロンズ彫刻の制作方法と屋外での保存の問題点=ロダン作品をめぐって
◇主催:札幌彫刻美術館友の会
◇共催:本郷新記念札幌彫刻美術館/札幌芸術の森美術館/武蔵野美術大学校友会北海道支部
開催日時:平成28年8月31日(水) 14:00~16:00(2時間)
会場:本郷新記念札幌彫刻美術館 本館研修室
対象:彫刻家、美術館・大学などの学芸員・関係者、文化行政・文化財保存関係者、野外彫刻ボランティア、友の会会員など
定員:30名 先着順 受講料無料
司 会 :樋泉綾子 本郷新記念札幌彫刻美術館学芸員
挨拶と紹介:大内 和 札幌彫刻美術館友の会 副会長 (5分)
講 師 :黒川弘毅 武蔵野美術大学造形学部彫刻学科 教授
(1952年東京都出身、彫刻家、屋外彫刻調査保存研究会運営委員)
演 題 :「ブロンズ彫刻の制作方法と屋外での保存の問題点-ロダン作品をめぐって」 (85分)
自由討論:会場との質疑応答 (25分)
閉会挨拶:亀谷 隆 武蔵野美術大学校友会北海道支部 会長 (5分)
終了 16時00分
【本郷新記念札幌彫刻美術館開館35周年記念 ロダン展】 会期:7月9日~9月25日
当日、ロダン展観覧をご希望の方は団体割引料金となりますので、美術館受付にお申し出ください。 [一般800円/65歳以上640円/高大生500円/中学生以下無料]
本郷新記念札幌彫刻美術館
所在地:〒064-0954 札幌市中央区宮の森4条12丁目 電話:011-642-5709
お問合せ先:奥井登代 札幌彫刻美術館友の会事務局 中央区旭ケ丘5-6-61
電話:090-1527-9009 E-mail: <toyookui@jcom.home.ne.jp>
パーマシールド
《母と子の像》山内壮夫作コンクリート(1961年)のパーマシールド塗装は晴天とそよ風に恵まれました。また手慣れた刷毛さばきで大変気持ちよく無事作業を終えることができました。作業内容は,前日洗浄されて十分乾燥したコンクリート表面にパーマシールドM12液(分子量が小さく、浸透性)を2回塗り、昼食を挟んで約2時間風乾させた後、ついでパーマシールドM18(分子量が大きく、表面塗装用)を二回重ね塗りして終了。この間に市内各所の公園内のバラを育て、管理しているボランテア団体の方が立ち寄って下さり、塗装作業をしながら公園を拠点にしたボランテア活動につぃて種々雑談を交わすことができました。
参加いただいた皆様、お疲れ様でした。(橋本)
今月の学習会はドーム散策でした。
7月25日(月)、学習会として札幌ドームに点在する24点のアート作品のうち、開催予定のコンサドーレ札幌の試合のために、立ち入ることができなかった3点をのぞいて21点を鑑賞。参加者は11名、足に自信のなかった会員も爽やかな風の吹く絶好のピクニック日和の中、広い札幌ドームを難なく一周することができました。何度も訪れている大内副会長の案内で回り、高橋淑子さんの解説を聞きながらの散策でした。ドームは手入れされていましたが、傷みが出てきている作品もありました。
國安孝昌《北辰の龍神 》 大岩オスカール《フェイジョン》
奥山喜生《立体空間より平面空間への還元》 (目地部分に化学反応で傷みが)
國松明日香《休息する翼》ちょっと休息したい場所です。
その後、清田区【しんえい四季のまち】まで車3台に分乗して足を延ばしました。ここは「いずみ」36号風見鶏にも記載(大内)のある計画団地で、造成にかかわった國松明日香氏の作品など6点の彫刻作品が心地よい公園の中に点在していました。近く改造の予定だそうですが、この良さを失わせないでほしいものです。